照りつける太陽。そよぐ風。雲ひとつない晴れ空の下、「人間」と「魔族」が"時"を待っていた。
王都カンヴァスの北端で対立する二つの軍団。その両者は焦れていた。いつになれば、この睨み合いが終わるのか──屈強な魔物ならともかく、人間の兵士達には過酷な滞留だった。
命令。命令はまだか。
こうしている内にも我々は疲弊する。そうなれば、事は彼奴らの思惑通りになってしまうのだ。
カンヴァス王都軍の後方部隊長は、そんな風に考えて歯噛みした。
したたり落ちる汗。緊張感に耐えられなくなった兵隊が、ついに何やら行動を起こそうとする。
「待て!」
隊長は腕をあげ、それを制止した。何か様子がおかしい。
背後から"よからぬ気"が近付くのを感じる。指揮官はゆっくり首をめぐらし、その方向を見た。
果たしてそこには、黒毛の巨大な魔物が立っている。かつて魔法世界の制圧を目論んだ、不死身の魔王ガッシュ。人にも獣にも見えるこの化け物は、声を呑み身動きもとれない人間たちを見据えた。
「ま、ま、魔王だ」
突然の出来事に、うろたえた兵士達が四散しようとする。隊長は叱咤怒号しそれを呼び止めた。
「怯むな。敵は一人だぞ!」
きびすを返しよく見れば、確かに魔王以外は誰もいない。どうやって後ろに回りこんだか知らないが、手下を連れている様子もなかった。恐ろしい魔人とはいえ、相手は単独。殿を守る兵士と魔術師が総出でかかれば、もしや善戦できるかもしれない。そう判断した一軍は勇気を振り絞って突撃した。
だが次の瞬間、それは愚計であると誰もが知った。
仁王立ちした魔王が右手を払うと、烈風が巻き起こり兵隊を阻む。体躯をぶつける戦士は、なにくそ、と鉞(まさかり)を振り下ろした。しかし兵器は、鋼のような硬い体毛に弾き飛ばされる。
打撃ではだめだ。そう直感した隊長は、魔術部隊に指示を出した。白い法衣の男たちが前に出て、二言三言唱える。すると彼らの掌から閃光や火炎、氷の刃などが一斉にほとばしった。
無数の迫撃が魔王を襲う。されどガッシュは動じた風情もなく、その場に立ち尽くしていた。
轟音とともに、力の塊が魔獣を叩く。叩く、叩く、叩き付ける。
確かに手応えはあった。これなら、さしもの魔王も無事では済むまい。
──などと勝ち誇る余裕は与えられなかった。
わきたつ硝煙の中から、旋風の如く走り抜ける影。その黒く巨大な"獣"は魔術師たちの間に闖入すると、赤い右目を不気味に光らせた。どうした事か、それを見ると身体が動かなくなってしまう。金縛りにあった術者は、みな戦慄を覚えた。必死で逃げ出そうとするが、足が言う事をきかない。
魔王が吼える。両腕を大きく開き気合を発すると、周囲にいた兵隊・魔法使いたちは、抵抗すら適わず宙に投げだされた。彼らはそのまま地面に墜落する。
呻き声を上げる人間たち。その憐れな姿を見て、魔王は憫笑した。
『どうした人間ども。まさかこれで終わりではあるまいな』
その騒乱はすぐに、前方にいる人間や魔族たちの知るところとなった。ひと足遅れて漸く戦列に加わった公爵アンフォルメルも、その様子を結晶球に映しだしている。主の活躍を知った貴公子は、計略の成功に歓喜した。いや、それだけではない。魔王の凄まじさを五年ぶりに再見して、心踊らせていた。
「さすがは魔王様、以前より遥かに強大になられている」
一度は敗れたはずの君主。だが、彼は蘇るたびに魔力を増していた。それは涸れることのない泉のように、その根源がなんであるのか、魔軍最強の戦士アンフォルメルにも想像がつかなかった。
ジャッド・マグナ・クローム・バンドルニス。四人の公爵たちも、その様相を確認して驚嘆する。
「嗚呼、あれが我らの王。その名に恥じることの無い鬼神の如き姿だ」
「あの軍勢に囲まれて無傷とは! これは、魔王軍の負けは無いな」
「いや──むしろ強すぎる。もはやこの世に敵うものは居るまい」
「おお、ついに人間側の真打ちが出てくるらしい。どこまで持つか見物よ」
魔王の蹂躙を食いとめるべく、部隊の中央から別の術師たちが登場した。衣装には、筆記用具を模った金の装飾を着けている。これは『画術師』の紋章だった。
こうしてはいられないと、向かい合った魔軍も活動を開始した。傀儡に進攻の合図をする。雄叫びを上げ、怪奇、醜悪、魁偉……ありとあらゆる恐怖の怪物たちが、人間の群れを襲撃した。
懸命に抵抗・反撃を始めるカンヴァス王都軍。いよいよ両者は、本格的に激突することになった。
『画術師か』
ガッシュの青い左目が輝く。彼が最も、深い憎しみを抱いている存在。それがいま目の前に立ちはだかっていた。理性的、かつ野性的な瞳で睥睨する魔王。彼は妖しく笑って告げた。
『来い。すべて屠ってやろう』
画術師たちは、各人様々な行動を取る。紙切れを投げる者、空中に印を結ぶ者、地面に図形を描く者……それらすべてが、一気に魔力を発動させた。それは、先刻と同じくガッシュの身を包む。またも魔王は逃げようとしない。侮られたと悟った術者たちは、忌々しく舌打ちする。
だがカンヴァスの中でも精鋭と呼ばれる彼らは、油断をきっと後悔するだろうと確信していた。
ややすると、爆煙もおさまる。やはり攻撃は通用しないらしい。張り合いのない表情でガッシュは顔を上げた。すると───
彼の身体は、蜘蛛糸のようなもので巻きつけられている。細くて弱々しく見えるが、少し身体をよじったぐらいでは、とても外せそうにない。糸は幾重にも絡み合って魔王の身体を束縛した。
『ほう、頑丈なものだ』
「それには十四人の画術師の手が加わっている。いかな魔力の持ち主でも、解くことはできぬ」
術者の指揮官であろう、白髪長鬚の老人が言い放つ。老いてなお、強い意志を感じさせる瞳。導師は新たに絵を描き始めると、ガッシュに向けた。ここで追い撃ちをかけるつもりだ。
『"いかな魔力でも"……だと?』
魔王は頭を垂れ、くぐもった声を上げた。
『俺を貴様らの才量ではかるつもりか。分を知れ!』
その大喝に気おされた導師は、準備していた魔法を途中で発動させてしまった。
全体への打撃が困難なら、一点に集中すれば善い──そう考えて放たれた"画力"の精粋は、細微な光の尖鋭となり、魔王の眉間めがけて閃いた。
刹那、ガッシュの両眼が妖光を発した。「赤」と「青」の輝きが交錯して、『紫』に変化する。
次の瞬間。画術師たちは、魔王の身体が「倍に膨れ上がる」ような錯覚におちいった。
まやかしだ! 導師は目を擦って、敵の姿を凝視する。しかし魔獣の躯はどんどん大きくなってゆき、彼を拘束していた繊維を「あっ」という間にちぎり飛ばしてしまった。
依然として魔王を狙う集光。だが電光石火、それはガッシュの指で跳ね返された。巨獣は間髪いれず、動揺する術者の首を引き掴む。そして余裕の笑みを浮かべると、そのまま地面に押し倒した。
『焦ったな。貴様の負けだ』
絶望感に打ちひしがれる画術師。魔王は、この勇敢な敗北者をどうするか思案する。結果、
(俺のように生き恥を曝すこともあるまい)
そんな自己満足の結論に至って、導師に止めを刺そうと身構えた。
その時───
ガッシュの胸元から何かがこぼれ落ちる。目をやると、それは不細工な"花"だった。
『これは……』
魔王はとっさに人間から手を離し、代わりに花を拾い上げた。それを見つめると、なぜだろう、たった今までの殺意、憎悪、敵対感が、すべて打ち消されていくような奇妙な感覚に襲われるのだった。
ガッシュは苛立つ。なぜ、こんな気分になる。憎い人間どもなど殺してしまえばいいではないか! 今まで彼奴らがしてきた事を忘れたわけではあるまい。俺は──俺は、こんな感情は認めぬ。
魔王は必死に抵抗する。自分の中でふたつの心が戦っていた。今まで無かった……いや「忘れていた」もう一つの心が、彼を苛んでいた。
(戦ってもみんな悲しいだけだよ)
───どこからか声が聞こえてくるような気がした。これは……あの娘? ガッシュの脳裏にぼんやりと、少女の屈託ない笑顔が浮かぷ。その顔がまた遠い過去の記憶と重なる。意識が遠のくような錯覚に陥った魔王は、また苛立った。小癪な……
(どうぶつのおじさん、またね)
(またね)
いや、そんな「いらだち」も、やがて無くなった。かわりに不思議と穏かで、そして晴れやかな気持ちに包まれる。
すでに彼は目の前にいる人間たちなど、どうでも善くなっていた。
この花を自分に贈りつけた、あの「少女」の顔を今は完全に思い出し───魔王はふっと微笑んだ。
『命冥加なやつらよ。今日のところは預けておこう』
そう言い放つと身をひるがえし、彼を遠巻きにする兵隊たちに唸る。
『退け』
腰を抜かす兵士の群れ。彼らは命令を受け、さながら『モーゼの十戒』のように道を空けた。右手と左手、ふたつに分かれた兵団の中央を悠々と北進するガッシュ。それを阻もうとする者は誰ひとり居なかった。
やがて戦いを続ける人間と魔族の傍らに辿りつく。魔王は息を吸い込むと、号令をかけた。
『やめい、それまでだ!』
辺りがしん、と静まり帰る。すべての戦士が腕を止め、黒い魔獣を見つめた。ガッシュは前方にいたアンフォルメルに告げる。
『戦いは仕舞いだ。引き上げるぞ』
「魔王様、それは一体どういう事です。形勢は明らかに我らが勝っているというのに」
横から抗議したのは、貴公子ではなくジャッドだった。残りの魔族たちも、得心がいかないといった表情をしている。魔王は何も言わず、ただ黙って北を指さした。
顔を見合わせ、しばらく茫然とする妖魔たち。しかし主がそう言うのであれば仕方ない──。
「人間どもめ、これで済んだと思うなよ」
五公爵の一人クロームは、恐ろしげな視線を王都軍に向けた。ほかの魔物も口々に捨て台詞を残し、先頭に立って歩き始めるガッシュに続いた。そしてついに皆ぞろぞろと去ってしまう。
呆気に取られて、何も行動できない人間たち。何が起こったのかわからない、という風に口を開けている。これでカンヴァスの平和は守られた。……守られたが、どうも釈然としない。
だがずっと惚けている訳にもいかないので、兵士たちは立ち上がって帰り支度を始めた。
多くの怪我人が出たが、死者は誰も出ていない。あの魔王軍と戦って、これだけの被害で済んだのは──"奇跡"としか言いようがなかった。そんな月並みの言葉しか浮かんでこないのだ。
こうして戦いは終わった。魔族の驚異がなくなったわけではないが、当面は無事に暮らすことができるだろう。その間に戦力の増強をしなくてはならない。誰もがそう感じていた。今のままでは人間は、カンヴァスは滅びる。もはや五年前とは全く比べ物にならない程の危機に直面していた。すべての兵が疲れ果てている。彼らは様々な思いを胸に抱き、戦慄しながら帰途についた。
魔界に向けて行進する、魔族の一軍。果たしてこれは凱旋と呼べるのかどうか、公爵にも参謀にも、そして当然雑兵たちにも判らなかった。アンフォルメルは魔王に事の経緯を問いただそうとする。
しかしガッシュは多くを語ろうとしない。口にした言葉といえば、
『あの娘、名前も聞いていなかったな』 とか、
『ふ、"動物のおじさん"か……』
などという意味不明の台詞ばかり。公爵はすっかり困り果て、首を傾げるばかりであった。
「妙ですね……あそこで引く奴ではないのですが」
銀髪の画術師は、得心のいかない様子で呟きます。追従して歩く弟子も不思議そうに尋ねました。
「魔王に何があったのでしょう。僕たちが飛び出して、接近する間際に撤退するなんて」
そう。マーカーの言う通り、実はあの時アーティス達は魔王のすぐそばまで近付いていました。透明化の術を用いていたので、その姿を誰にも見咎められなかったのです。唯一ガッシュに気どられる事だけは覚悟しましたが、彼は「なにか」に集中していて、そこまでは気が回らないようでした。
わからない、と師匠は首を振ります。これはアーティスにとっても不測の事態でした。しかし何にせよ戦いは終わったので、画術師一行も帰路についています。
「今後、私も捜されるでしょうね。何しろカンヴァスはいま少しでも多くの戦力が欲しいはずですから。パレットと同じように、学生たちも台頭してくるかもしれない。でも王都においてはホルベーンの動向も気になりますし、なにかと油断は禁物です」
師はこれからの方針に考えをめぐらせていました。こういう事になると夢中のようです。
「わたしたち、なーんにも出番なかったわ。つまんない」
クレヨンがぼやくと、パステルが可笑しそうに言い返します。
「何言ってんの。あんたなんか出張っても、魔王の鼻息だけで吹き飛ばされてたわよ」
「ちょっと、何よそれ」 お下げ髪の妹弟子は、むきになって義姉に詰め寄りました。でもパステルはますます面白くなって、お腹を抱えて笑い出してしまいます。
「ひどい、ひっどぉい」
「あはは、ご免ごめん。でもまあ善かったじゃない、無事に済んで」
そのやり取りを見ていたマチエールも、微笑んで頷きました。
「そうですよね。争いごとなんて、無いに越したことはありませんから」
ただ彼女の気掛かりは、傷ついた兵士たちを自分の画術で癒せないことでした。それをしようとしたのですが、師にきつく止められたのです。少女は己の至らなさを悔やみました。
「私にもっと力があれば……戦いではなく、守るための力が欲しい」
そんなマチエールの左肩に、ぽんと手が置かれます。それは姉弟子テンペラのものでした。
「貴女はよくやってるわ」
彼女はそう言っただけで、あとは黙って歩き続けます。
意外な言葉、でした。義姉は他人の能力を認めたり、誉めたりすることはまずありません。しかもマチエールとは正反対の攻撃のための力を学んでいます。その彼女が自分に声を掛けるというのは、とても珍しい行為なのでした。少女は目を丸くして立ち止まっていましたが、やがてにっこり微笑み、自分も歩き出します。
(あれが魔王……ガッシュ)
列の最後尾を歩くアクリルは、先ほどの戦いを思い返していました。黒い巨獣──確かに恐ろしい魔物です。けれど魔王を眼前にしたとき、何故か彼女には畏怖とは別の感情が湧き起こりました。
まるで以前から出会っていたような……そんな筈はないのですが、そう感じたのです。思いつめる少女は、そのまま目を伏せて足を進めました。いま何だか無性にあの子に会いたい。アクリルはそんな気持ちになります。「あの子」というのは、もちろん───
「おかえりなさーい」
クーピィは、明るい笑顔でアーティスたちを出迎えました。出かける前とは様子が全然違います。いったい少女にどんな心境の変化があったのだろう、と訝んで、彼らはお互いの顔を見合わせました。
それはともかく、室内に妙な違和感があります。彼らはまた不審に思ったものの、今度は原因がすぐに解明しました。細長い食卓の上に、豪勢な食事が並べられていたのです。温かいスープから湯気がたち、その他にも様々な食べ物が用意されていました。これには全員、我を忘れて驚きます。
「クーピィ、どうしたのこれ」
マーカーが慌てて義妹に聞きました。少女は満面に笑みを浮かべて、元気に答えます。
「あたしが作ったの!」
その真実に、またもやびっくりする師匠と姉弟子たち。突如脇から黒い鳥が現れて彼らに告げました。
「ええとな、一応本当の事だぜ。俺も見てたよ」
「しかしペンシル、この食材はどこから来たのですか」
すかさずアーティスが疑問を投げかけます。途端、ペンシルは返答に詰まりました。よもや「クーピィの見張りを放棄して、大空を舞っていた」などと言えるはずがありません。黒い鳥はしどろもどろになって、適当な言葉を並べ立てます。
「いやあ、ほら、ちゃんとマチエールの見よう見まねで調理したらしいぜ。大したもんじゃないか」
「そういう事を聞いてるんじゃありません。まさか、勝手に出かけたのでは」
「そうだよ! 都までお買物してきたの」 師匠の問いに、クーピィは悪びれず答えました。例によってまた、彼らは愕然とします。なんて無茶なことを……その場にいる全員が、同じ感想を抱きました。
「あんた馬鹿でしょ。絶対に。都には魔王軍が来てたのよ!」
クレヨンが息まいて少女に告げます。するとクーピィは、ぽんと手を叩いて頷きました。
「あ、そうか。だからみんな、お家に隠れてたんだぁ」
一同から深い溜息が漏れます。そういえば、この子には何も教えずに出発していたのでした。
「でも無事で善かったじゃありませんか。ね、皆さん」
マチエールは、努めて明るく庇いました。ほかの弟子も苦笑して同意します。
「済んだことはいいわ。せっかくだから食事を戴きましょう」
テンペラが席に座ると、残りの義姉たちも後に続いて、次々と食卓につきました。
まずはアーティスが代表して、料理に口を付けます。わくわくして見守る末弟子。ほかの生徒たちも固唾を飲んでそれを見守りました。しかしやや経って、師匠の様子がおかしいことに気付きます。その顔は引きつって、蒼白になっていました。
(不味い、のね……)
姉弟子たちは絶望の表情でそれを眺めています。
「先生おいしい?」
「お……美味しいですよ。はい」
クーピィが無邪気に尋ねるので、師は本当の事など決して口にできるわけがないのでした。
次いでクレヨンも、恐々と料理を食べます。結果は同じ事でした。
しかし───
「ま、あんたにしちゃ頑張ったわよ」
予想外なことに少女は、義妹にねぎらいの言葉をかけます。クーピィの顔がほくほくと綻びました。
(クレヨンってば、平気なの──?) パステルは驚いて、スープを口に運んでみました。案の定とんでもない味がします。まるで薬湯を飲んでいるような……ともかく普通の食べ物ではない、と感じます。
あの食材で、どうやればこんな料理が出来るのか不思議でした。ですが一所懸命に作った食事なので「けち」をつける訳にもいきません。一同笑顔を作って、必死に食べ続けていました。
どうして我慢できるのかと言えば──実はみんな、クレヨンと同じことを考えていたからです。
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こうしてパレットの晩餐は続けられました。料理の味も(これはこれで)次第に慣れ、彼女たちの間からは談笑が聞こえてきます。それは、つかの間の平和かもしれません。でもパレットの「家族」がいれば、この先の何事も怖れることはない。少女達はそう思っていました。
台所の後片付けをしていたクーピィは、ようやく食卓について、自分の料理を食べてみます。 |
不意に、甲高い声が鳴り響きました。
「まっずーーーい! このスープ、にがぁい」
それを聞いた姉弟子たちは立ち上がり、末弟子を指さして一斉に叫びます。
『あんた(あなた)、味見してなかったの!?』
伝説に名を残す『画術師』が誕生するのは、まだずっと先のお話。
ひとまず、おしまい
画術師クーピィ
Art magician coopy |
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